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3PL(サードパーティー・ロジスティクス)とは?物流において3PLの位置付けや、導入のメリット・デメリットについて解説します。

「物流において3PLとはどのような位置づけなのか」
「3PLを導入するとどのようなメリットがあるのか」
「3PLはどんな会社にとって有益なサービスなのか」

という方のためにロジスティクスに関わるコンサルティングサービスやシステムソリューションを提供している会社の現役COOが3PLについて、徹底解説いたします。
物流業界初心者の方から3PLの導入を考えている、
「3PLという言葉は耳にしているが具体的には分からない」
「3PLを導入する前に決めておくべきことが分からない」
という方向けに記載していきます。

3PL(サードパーティー・ロジスティクス)とは?

例えば製造業社が製品を製作・販売を行う場合、「原材料の仕入れ」、「倉庫・物流センターへの輸送」、「倉庫・物流センターから小売店への出荷」、「廃棄」など、それぞれの工程で物流の必要性が生じます。この物流に関わる業務を外部委託という形で製造業社や荷主から一括で請け負う業務形態のことを、3PL(サードパーティー・ロジスティクス:3rd Party Logistics)と呼びます。
なお、ファーストパーティーは製造を行うメーカーのことを、セカンドパーティーは小売業などの事業者のことを指し、第三のファクターということで、物流のことをサードパーティーと言います。
物流の専門業者が倉庫内や物流センター内の業務や配送の全工程を一元的に受託することで、無駄を省き作業効率を向上させた一貫性のある物流経路の設計が可能となり、コスト削減に繋げることが期待されます。
以下では、3PL事業のメリットやデメリットに加え、導入を検討するために事前に知っておきたい情報を記載していきます。

3PLの種類

一口に3PL事業と言っても、業務の請け負い方、会社の業務体系によって「アセット型」、「ノンアセット型」の2種類に大別することができます。
以下ではそれぞれの概要と、得意とする分野や苦手な分野を紹介していきます。
①アセット型

①アセット型

「アセット型」とは、3PL業者が物流のノウハウを持っていることに加え、トラックなどの実際の運送手段や倉庫などの拠点となる施設を社内で抱えている業態を指します。
物流の経路という戦略的な側面を考案するだけでなく、実際に運送を担う部門も自社で保有していることにより、より無駄を省いた一貫性のある物流を実践することができます。
アセット型という名称も、「資源、財産」などを意味する英語の「asset」が語源となっています。
②ノンアセット型

②ノンアセット型

もう一つの形態は「ノンアセット型」です。
こちらは、実際に運送を担う物流部門は社内には抱えず、物流の戦略面を考案することに特化した業態を指します。物流のコンサルタントとも言うことができるでしょう。
一見社内で運輸手段を一から十まで完結できるアセット型に比べ、利点が少ないようにも思えてしまいますが、輸送方法や保管方法などの実動部分を取り扱う製品や物流の特性に合わせた外部を活用することで、顧客のニーズに合わせた柔軟なプランを用意することが可能となります。自社内のスペックに縛られることのない、融通の高さがノンアセット型の強みと言えるでしょう。
また、「asset」ではなく知識「knowledge」の部分を売りにすることから、「ナレッジベース型」と呼ばれることもあります。

3PLを導入するメリット

物流システムのアウトソーシングである3PL。そのメリットを以下でご紹介いたします。
①経費の削減

①経費の削減

製造段階での原料の仕入れ、出来上がったものを卸すまでの流れ、卸売業社から小売店への配送。一つの商品が消費者の手元に届くまでにも、様々な物流の行程があります。この行程を、それぞれの段階に合わせ物流業者に発注する中で、気付かぬうちに必要以上の物流コストが発生していることが往々にしてあります。全体を俯瞰して見られる外部の専門家に一括で委託することで、物流経路の改善や費用の削減を望むことができます。
②製造、経営へ集中できる

②製造、経営へ集中できる

全行程に関わる物流という大きなセクターを外部にアウトソーシングすることで負担を削減し、製造や会社の経営といった、本来一番注力すべき箇所へ時間・人員などのリソースを割くことが可能となります。物流面では専門業者の豊富なノウハウを借りつつ、自社は自社の専門分野に注力する。そうして製造力そのものがアップすれば、物流を外注することのメリットを更に活かすことができるようになります。
③人員確保の効率化

③人員確保の効率化

多くの業界に繁忙期と閑散期がありますが、自社で物流を担うということは基本的には最大限に人手を必要とする繁忙期に対応できるだけの人員を確保することを意味します。つまりそれはイコール、閑散期には余剰の労働力を抱え、必要以上の人件費への投資と言えます。
物流を外部委託にすることにより、稼働分に対しての出費だけで済むようになるので、業界によってはかえって経費を安くできることもあるでしょう。
④販路の拡大

④販路の拡大

物流の専門業者は、それまでの業績の中である程度の構築された独自の物流経路を持っていることが多くあります。物流の専門業者と手を組み、販路やノウハウを活用させてもらうことで、自社だけでは取り組みが難しかった販路の拡大も実現できる可能性があります。

3PLを導入するデメリット

一方、第三者に物流を委ねる形態を取ることにより生じるリスクがあることも確認しておく必要があるでしょう。
①ノウハウの蓄積が難しくなる

①ノウハウの蓄積が難しくなる

物流機能を一括して外部に委託するということは便利さの反面、自社内で物流を担ってきた人材の流出やノウハウの喪失につながるリスクがあります。委託はするものの、そこで行われる業務の内実を3PL業者と共有・把握し、製品がどのような経路を辿り消費者の元に届くのかを理解しておくことはリスクヘッジの観点からしても大切なことと言えるでしょう。
②管理体制に注意を要する

②管理体制に注意を要する

外部の業者に委託するため、自社内の倉庫で製品を管理し、個別で物流の手配を行っている場合に比べ、管理の目が離れがちになることがデメリットとしてあげられます。品質維持のためには、管理体制・輸送方法を求める水準で維持することは非常に重要なポイントとなります。自社の製品をどう扱い、届けて欲しいのかという認識の共有は、自社内管理の時に比べより徹底する必要があるといえます。
③提携企業による販路などの固定化

③提携企業による販路などの固定化

3PL業者は物流の専門業者といえども、提供・提案される販路や保管方法に業者毎の得手、不得手はあります。適切な業者と手を結んだ場合、大きな力になる3PL業者ですが、自社の求める物流体制と提携する3PL業者の得意分野が合致しない場合は円滑な業務遂行に支障が生まれる可能性も否定はできません。まずは自社でどんな物流体制を求めているのかニーズを明確にし、その上で提携業者を慎重に選ぶことで、実際の運用後の思わぬ食い違いを防ぐことができるでしょう。

どんな会社が3PLの導入をするべきなのか

これは限られた経営資源を自社の本当の強みの部分に集中させたいと考えている企業です。
例えば製造業であれば製品開発や製造、卸業であれば商品企画や営業に経営資源を集中し魅力的な製品や商品を生み出したり販売していくことに注力していきたいことでしょう。
一方、自社で物流を行うためには各種の物流設備や機器等のアセットや昨今非常に難しくなっている人材の確保と維持管理が必要となります。

3PLを活用することにより、物流に注いでいた経営資源を削減し自社の強みの部分に注力することが可能となります。また、その業務に関わるリスクについても外部にシフトすることが可能となります。

3PL導入の際の注意するポイント

①3PL業者に丸投げにしない

①3PL業者に丸投げにしない

外部の業者といえども、大切な自社の製品を顧客の元まで届けるパートナー。3PL業者に丸投げしてしまうのではなく、製品をどのように取り扱い、運送する必要があるのか、今、どのように扱い、運送しているのかを、お互いに共有していくことがとても大切な要素となってきます。
②繁忙期への対応力の確認

②繁忙期への対応力の確認

3PL業者は一社のみを顧客としているわけではなく、複数の企業の物流を担う業者です。それぞれの企業の繁忙期が重なる可能性もある中で、自社の繁忙期に適切に対応してもらえるのかを予め確認しておく必要があります。物流業者側の都合で自社の運搬に制限が加えられてしまうようであっては、外部と提携するメリットが失われてしまいかねません。
あらかじめ決めておくとスムーズなこと

あらかじめ決めておくとスムーズなこと

上記で確認してきた注意点ですが、事前に丁寧な要件定義や交渉を行い、詳細を詰めていくことで未然にリスクを減らしていくことは可能です。どこまでを自社で担い、どこからを委託するのかを明確にし、委託後も状況をその都度確認することで、メリットの部分をより多く享受することができるようになるでしょう。デメリットも正確に把握した上で、それを減らす手段を講じ、メリットを最大化することが重要な要素となってきます。

3PL事業の導入事例

以下では弊社が関わった企業の事例をもとに、3PLを導入することでどのような事業改善が望めるのかをみていきたいと思います。
①大手ドラッグストア

①大手ドラッグストア

在庫管理システムを最適化することにより、坪単位で158%の効率化を実現し、配送のリードタイムも3. 05日短縮することに成功しました。またオペレーションを再設計し出荷処理能力を最大化することにより、187%増という2倍弱の改善を行うことができました。
②大手携帯電話キャリア

②大手携帯電話キャリア

保管体制を見直すため、全国のセンターの統廃合と標準となるモデルセンターを構築することにより、固定費を29.2%削減することに成功しました。また、業務支援システムを開発・導入することなどにより庫内業務費を36.7%削減することができました。
③大手医療・食品メーカーの物流グループ会社

③大手医療・食品メーカーの物流グループ会社

「食料・飲料」「医薬品」「日用品」という3つの事業に対し、1つのプラットフォームを共同活用する「共通プラットフォーム戦略」を導入しました。またそれを効率的に利用するため、トラックの回転率を上げる仕組みを構築し、配車時間を3時間から20分に短縮、トラックの回転率は30%向上することができました。

ご紹介したいずれの事例も、クライアント企業から好評を頂きました。
また、クライアント企業が抱える課題を解決し、利益・効率の改善を図ることは、結果的にその先にいる顧客の方々の満足度を高めることにも繋がります。

まとめ

ここまでで3PL事業についてご紹介してきました。
製造業、流通業、サービス業において、物流というのはとても大きな構成要素です。事業全体を総合的に俯瞰できる第三者から改善策の企画・提案を受けることは、現場目線では気が付くことのできなかった問題に対する有効なアプローチと言えるでしょう。加えて、提案内容を実行に移すノウハウも持ち合わせている3PL業者は、業務の効率化を進めていく際の心強いパートナーにもなり得ます。

また環境問題の観点からも、3PL事業は注目されています。3PL導入により物流経路が効率化されることで、CO2排出の削減などのメリットも見込まれるからです。そのため、国土交通省も3PL事業を総合的に推進しています。

自社内の物流分野の見直しを検討する事業者の方は、3PL事業との提携も一つの選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。

シーオスの3PLサービスは単なる物流業務の受託としては実施しておりません。複雑になっている現代のロジスティクスに対する、ソリューションサービスの一部として、オペレーション、目指すロジスティクス業務の達成、ロジスティクスの改善、そして、これからはお客様の業務の省人化、可視化、そこに続く装置産業化を目指してサービスを提供しています。また、シーオスでは各種システムやロボット等、先進システムを開発、プロダクトとして提供をしており、そのノウハウ、メソッド、アセットを適用することが可能です。もう少し詳しく聞きたい場合は、弊社へお問い合わせください。

ロジスティクス大賞の受賞で裏付けられる
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シーオスは、公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会が主催する「 ロジスティクス大賞」を2度受賞しています。

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