異なる属性の商材をどう束ねるか

「運べない」リスクと「受け取れない」限界を突破する共同物流の最適解

■ この資料でわかること

  • 物流2024年問題・新物効法が荷主企業と店舗の現場に突きつける本質的な要求と変化
  • 食品と非食品の縦割り物流が生む構造的ムダと、それを解消する「フルライン化」の仕組み
  • 共同物流の構想を阻む「運用思想の衝突」「データ」「自前主義」という3つの壁の正体
  • 不完全な商品マスタを補完し、年間最大の物量波動(ワーストケース)に耐える実効的な検証手法

■ このような方におすすめ

  • 小売・卸売業の経営層や経営企画担当者で、新物効法への法規対応と抜本的コスト削減を両立したい方
  • 物流・ロジスティクス部門の責任者で、マスタ不備や現場・納品先の反発により配送統合が進まない方
  • 営業部門の責任者・幹部で、リードタイム延長による失注リスクや顧客対応への懸念を抱える方
  • サプライチェーン改革を推進するリーダーで、社内の「総論賛成・各論反対」の打破に悩む方

はじめに

物流の「2024年問題」や「新物効法」の施行によって、いま日本のロジスティクスは大きな転換期を迎えています。今回の法改正の本質は、配送側だけでなく、荷物を受け取る「店舗や納品先」の効率化まで荷主の責任として厳格に問われるようになった点にあります。
この危機を乗り越えるために、いま多くの企業が「違う属性の商材をまとめて運ぶ」共同物流の検討を始めています。ただ、いざ進めようとすると現場の反発やデータの壁にぶつかり、実証実験の段階で頓挫してしまうケースが本当に多いのが厳しい現実です。 本資料では、実務で直面するリアルな課題と、それを突破するための「具体的な判断軸」について、私たちシーオス株式会社の現場発の知見を交えて解説していきます。

目次

「縦割り物流」の構造的限界を打破する「フルライン化」への転換

カテゴリ分断が引き起こす「見えないムダ」と現場の悲鳴

これまでは当たり前だった「異なる商材の縦割り物流」(食品と非食品など)ですが、これによって同じ店舗に別々のトラックがバラバラに届くという、非効率な日常が生まれています。
店舗側では荷受けや検品作業が二重に発生し、店舗スタッフの労働時間を逼迫させています。またトラックも小分けに配送することで積載率が上がらず、配送コストも環境負荷もムダになっています。こうした積載効率の低迷や荷待ちは新物効法の是正対象になるため、経営リスクに直結する問題です。

常識を覆した先行事例:薬王堂×PALTACの「混ぜて運ぶ」メカニズム

ここで、これまでの常識を覆した事例をご紹介します。ドラッグストアの薬王堂と、卸大手のPALTACが取り組んだ仕組みです。
両社は物流センターを統合し、食品と日用品を同じトラックに「混ぜて運ぶ」仕組みを構築しました。店舗での陳列のしやすさや荷受けのしやすさを最優先にした「フルライン化」への転換です。この改革によって、配送トラックは2〜3割も削減され、店舗の省人化も同時に達成されました。「カテゴリごとに別々で配送する」というこれまでの常識を捨てて、受け取り側のメリットを最大化した好例です。

表面的な成果だけを追い求めない:「きれいな結果」の裏にある痛みの許容

ただ、ここで注意したいのは、「じゃあ自社も明日から混載しよう」と表面だけを真似しても、高確率で失敗に終わるということです。
この成功事例の裏には、物流マスタの地道な整備や、自動化投資という土台作りが寄与しています。他社の「きれいな結果」だけを見るのではなく、自社の足元の泥臭い現実と向き合う覚悟が必要です。共同物流のプラットフォームでは、参画各社が「自社ルールの放棄」という痛みを許容し、持続可能性の担保を進めているという点を見落としてはいけません。

統合を阻む「見えない3つの壁」とその正体

共同配送を実現するにあたって、私たちの前に立ちはだかる「3つの壁」の正体を紐解いていきましょう。

壁①:カテゴリー・法・商習慣が織りなす「水と油」の現実

まず1つ目は、運用思想の衝突です。
違う商材を混ぜるとなると、例えば洗剤の香りがお菓子に移ってしまう「匂い移り」の品質リスクが伴います。また、ヘアスプレーなどの「危険物」を扱うための消防法による倉庫設備の壁も立ちはだかります。さらに、食品の日付管理と日用品の高速な返品入替という、まったく異なる管理ロジックの不一致も大きな障壁です。これらは現場から最も強い拒絶が起こるポイントであり、物理的な課題以上に運用の思想が衝突します。

壁②:「マスタデータが存在しない」という致命的な落とし穴

2つ目は、データの壁です。
共同配送の計画時に最も挫折しやすいのが、全商品の正確な「3辺サイズ」や「重量」のデータが社内にないという点です。メーカーのデータに頼ろうとしても、データ精度が高くないために実態と合わずに計画が破綻する、ということがよくあります。物流マスタの整備や、入荷時に自社で実測するようなプロセスなしにシミュレーションは成り立ちません。どんなに高価なシステムを入れたとしても、土台のデータが不完全ならば、すべて机上の空論になってしまいます。

壁③:「標準化」を拒絶する自前主義

3つ目は、自前主義の壁です。
共同配送をやるということは、自社専用のこだわりや独自ルールを捨て、会社間で同じルールを適用するということです。
共同配送の先駆者である「F-LINE」の事例でも、各社が専用パレットを廃棄し、レンタルパレットへ仕様を一本化したことで大きな突破口を開きました。物理的な統合の前に、運用の標準化に合わせるという経営判断が求められます。「自社の伝票や運用は一切変えたくない」という自前主義のわがままが、改革の足を引っ張る最大の原因になります。

実運用で破綻しない「シミュレーション」の科学

では、これらの壁をどう乗り越えていけばいいのでしょうか。実運用で破綻させないための3つのアプローチを提案しています。

アプローチ①:「データの空白」を埋める段階的クレンジング

「商品マスタの不備があるから、きれいになってから始めよう」では、いつまで経っても改革は進みません。
まずはカテゴリ別にデータの「みなし補完」を行い、大枠の概要をつかむことが重要です。その上で、パレートの法則に従い、物量全体の8割を占める「主要SKUの上位20%」にターゲットを絞って実測していきます。この段階的なアプローチをとることで、短期間で高精度な検証が可能となります。数年かけて完璧なマスタを作るのを待つのではなく、賢くスピーディーに進めるのが実務の鉄則です。

アプローチ②:「ワーストケース(最大波動)」に安全率をかけるストレステスト

シミュレーションをする際、日々の物量の「平均値」をベースにしてはいけません。
考慮すべきなのは、過去1年間で最も物量が多かった「最大波動の日」などの例外パターンです。食品と日用品の物量のピークが衝突したときに、どれだけの積み残しが発生し、緊急チャーター費用がいくらかかるのかを可視化するなど、何が起きるのかを明確化します。こうしたシナリオにも耐えられる安全率の設計こそがプロジェクトの重要な判断軸になります。平均値をベースにした実証実験(PoC)のみでは、本番運用時の破綻リスクにつながります。

アプローチ③:現場の暗黙知を解剖する「システムと人間の境界線」

もうひとつ大切なのが、システムで処理できない「例外商材」への対策です。突発的な販促物や不整形な什器などへの対策不足は、運用を崩壊させます。
そのため、定型業務(段ボールやパレットの積載)はシステムに委ね、例外対応は現場の人間がシステム外の運用で吸収するといったような「システムとアナログの明確な境界線」を定義することが不可欠です。すべてを自動化しようとせず、配送現場のベテランの「職人芸」をどこで活かすかを事前に設計しておく必要があります。

「総論賛成・各論反対」を乗り越えるステークホルダー別・合意形成の実行論

なぜ現場は牙を剥くのか:「総論賛成・各論反対」のメカニズム

役員会議では「コスト削減」の大義名分に総論賛成になっても、現場に降りた瞬間、「パレットが違うから混ぜられない」「伝票変更は営業戦略上無理だ」と各論反対の逆風が吹き荒れる。これはよくある光景です。
なぜこれが起きるかというと、経営・営業・現場で、抱える強みや弱み、見ている視点が根本的に異なるからです。各部門がそれぞれの「正義」や自己防衛で話しているため、正論だけをぶつけても平行線をたどるだけになってしまいます。

領域をつなぎ合わせる「翻訳者(仲介役)」の必要性

この壁を突破するために大切なのは、異なる言語を話す各部門の間に入って相互理解を促す「翻訳者」の存在です。
きれいな絵を描くのが得意な「企画」、物理的制約を知り尽くす「現場」、技術構造を理解する「IT」、それぞれの弱みを補い、強みを束ねることで、ロジックを納得感のあるメッセージに変換します。専門領域ごとの言語のギャップを埋める存在こそが、組織を動かす最大の潤滑油となります。

ステークホルダー別・ロジック転換の具体策

そして、各ステークホルダーに対しては、相手のメリットになる引き換え条件(バーター)や視点を用意することこそが、合意形成のリアルな実行論です。

  • 対経営層:単なるコスト削減ではなく「運べなくなる機会損失を防ぐための、BCP(事業継続計画)投資である」としてロジックを転換します。
  • 対営業部門:リードタイム延長などの過剰サービス是正を受け入れてもらう代わりに、浮いた原資を販促予算へ振り分ける条件を提示します。
  • 対現場:今回の仕組みを導入することで、仕事がどう楽になるのか、前向きな環境変化として丁寧に伝えます。

結びに代えて

異なる属性の商材を束ねる試みは、単なるコスト削減の手段ではありません。これからの時代に事業を継続するための「経営戦略そのもの」です。 分断されていた境界線を融解させ、自社のこだわりを捨てるプロセスには確かに痛みが伴いますが、現状維持の先に未来はありません。ワーストケースを見据えた「シミュレーションの科学」と、現場を繋ぐ「合意形成の実行力」、この2つこそが、みなさんのサプライチェーン構造改革を力強く前に進める鍵となります 。

シーオス株式会社 について

シーオスは、ロジスティクス分野に25年以上特化してきたソリューションカンパニーです。
「ロジスティクス」を単なる物の移動ではなく、企業価値に直結する重要領域と捉え事業を展開してまいりました。創業以来、ロジスティクス領域に特化した専門チームを擁し、現場理解と戦略立案の双方に強みを持つパートナーとして、製造・小売・ECなど数多くの企業様の課題解決に伴走しております。

戦略コンサルティングからシステム開発、WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)、最先端のAMR(自律型搬送ロボット)ソリューション、さらには現場業務の受託に至るまで、フルラインアップのサービスを提供しています。

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この記事を書いた人

取締役
CCSO/Chief Consulting Officer
テクノロジーサービス事業部長
兼 サプライチェーン・ロジスティクス・コンサルティング部 部長

ベンチャー3社で営業・経営企画・商品開発など幅広い実務と新規立ち上げを経験後、現職。

全国の輸配送網の最適化PJ、倉庫内業務の改革・改善PJのPMや、自社プロダクト(TMS、トラック予約システム、搬送ロボット)の立ち上げ・推進など、複数案件の実績を持つ。

現在はコンサルティング、DXソリューションなどの事業部門全般を統括し、
多角的なアプローチで顧客企業のロジスティクス課題解決を担う。

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