「人手不足で生産性が上がらない」と叫んでいる工場で、いま起きていること

食品・インテリア・化学・自動車部品に共通する手押し搬送の構造と、今ある台車を活かす牽引型AMRという現実解

■ この資料でわかること

人件費も原材料費も上がるのに、製品価格には思うように転嫁できない。それはすなわち同じ要員で生産性を上げて利益を確保せよという命題である。本資料では、食品・インテリア・化学・自動車部品の4業態を取り上げ、業態ごとに抱える課題と、その共通の構造を整理します。そのうえで、生産性を上げて利益を確保する方法=今ある台車を活かして負担だけを取り除く牽引型AMRの考え方と、失敗しない導入の進め方をご紹介します。

■ このような方におすすめ

  • 人手不足の中、生産性を上げたくても現場に新たな負担を強いるのが難しい製造業の経営層・工場長
  • 身体的、肉体的負荷となる搬送が、採用難や早期離職の一因になっていると感じている方
  • 専門職や熟練者が、搬送のために持ち場を離れる時間を減らしたい生産管理・製造部門の方
  • 大規模な設備投資なしに、自動化の第一歩を踏み出したい方

はじめに

工場の自動化というと、加工機や組立ラインの話から始まることが多いものです。しかし実際に人手不足に悩む現場を歩くと、手が足りないのは加工そのものではなく、その前後で台車を押して運ぶ仕事だと気づかされます。
「求人を出しても人が来ない」「集まっても定着しない」。そんな悩みは、業種を問わず聞かれるようになりました。

今回は、食品、インテリア・家具・建材、化学・素材、自動車部品・金属部品という、扱うものも工程も異なる4つの業態を並べて見てみました。すると、表面の事情は違っても、根にある問題は驚くほど似ていることが分かります。

本資料が、自社の「運ぶ」を見つめ直すきっかけになれば幸いです。

目次

4業態に共通する、価格に転嫁できない構造

上がるコスト、動かない価格

4業態に共通する出発点は、コストの上昇分を価格に乗せきれないことです。たとえば食品製造業では、労務費の価格転嫁率が約35%と全産業でも最低水準にとどまるとされ、インテリア・家具・建材などの木材関連では、わずか4割台という数字も示されています。自動車部品・金属部品でも、転嫁できているのは5〜6割程度です。
利益を確保するための選択肢は、自社の中の無駄を削ぎ落とすしかありません。

生産性の天井をつくる「運ぶ時間」

無駄を削るといっても、加工機の自動化はすでに多くの現場で進んでいます。残っているのが、機械と機械、工程と工程のあいだを人が台車で運ぶ時間です。
従業者1人あたりの付加価値額を見ると、製造業全体の平均が700万円台であるのに対し、インテリア・家具・建材分野は500万円台にとどまります。ここには多品種化によって工程間の移動が増えたことが、深く関わっています。

採用難と離職を呼ぶ悪循環

手押しの重労働は、採用と定着にも跳ね返ります。きつい仕事だと見られれば応募が減り、入社しても早期に離れていきます。残った従業員の負担はさらに増し、肉体の疲労が積み重なって次の離職を生みます。
この循環を断ち切らない限り、どれだけ求人を出しても人は集まりません。搬送作業が残っていること自体が、経営のボトルネックになっているのです。 求人を出しても人が来ない。欠員を抱えたまま稼働する綱渡りが続く。人を増やせば解決すると考えがちですが、仕事の中身が敬遠されれば、採用の競争で競り負けてしまいます。
求人の条件や賃金を見直す前に、仕事の中身そのものが選ばれなくなっている可能性があります。人に優しい職場づくりは、採用の競争力そのものといえます。

業態ごとに違う、「運ぶ」負担の中身

食品:重い台車が、パートやシニアの定着を阻む

食品工場では、原材料や出荷前のカゴ車など、100〜300kgにもなる重い荷を、人が力任せに押して運ぶ場面が少なくありません。働き手の中心はパートや女性、シニアの方々です。こうした過酷な手押しの仕事は、採用でも定着でも敬遠される一因になっています。
食品製造業の労働生産性は、全製造業平均の約6割にとどまるとされます。人が集まらず、集まっても続かない状況は、この低さと無関係ではないでしょう。

インテリア・家具・建材:多品種小ロットが生む工程間搬送

特注品やEC向けなど、多品種で少量の生産が増えると、ラインが細分化され、木工、研磨、塗装、組み立てのあいだで仕掛品の移動が増えます。
本来は手を動かすべき熟練者が、ラックを押して歩いている時間は、そのまま稼働率の低下です。塗装や組み立てへ運ぶ500kg未満の重い仕掛品ラックを押す仕事は、直間比率を悪化させ、早期離職の原因にもなっています。

化学・素材:中軽量資材と、慣性の怖さ

ドラム缶や原料のような超重量物はフォークリフトが運びます。見落とされがちなのは、その陰にある100〜300kgの芯管、梱包用段ボール、調合用の添加材などを台車で押して往復する作業です。
台車は一度動き出すと簡単には止まりません。床のわずかな目地や傾斜で、一歩間違えれば重大な労災につながります。「ヒヤリ」が続けば、休業災害、ライン停止、信用の失墜へと広がりかねません。

自動車・金属部品:専門職が、単純往復に使われている

機械の段取り、調整、バリ取り、目視検査。こうした専門的な仕事を担う人が、1日に何度も台車で部品を運んでいます。
搬送のために持ち場を離れれば、そのあいだ機械の前に専門職はいません。専門要員が単純往復に時間を取られるのは、1円の利益も生まない搬送にコストをかけているのです。

業態「運ぶ」で何が起きているか失われているもの
食品冷蔵・加工ラインへの重い台車の押し運びパート・シニアの定着、本来の品質管理の時間
インテリア・家具・建材多品種小ロットによる工程間搬送の頻発ラインの正味稼働率、労働生産性
化学・素材100〜300kgの中軽量資材の往復と慣性リスク安全、職人の手が止まらない時間
自動車・金属部品専門要員による単純往復直間比率、専門職のモチベーション

※図解:4業態の「運ぶ」負担の比較

4業態を貫く、ひとつの共通点

並べてみると、運ぶ荷物の中身は違っても、起きていることは同じです。人にしかできない仕事に使うべき時間と体力が、搬送することに消えています。
食品では定着率に、インテリアでは稼働率に、化学では安全に、自動車部品では専門職の価値に、同じ「運ぶ」の負担が姿を変えて現れているのです。ということは、運ぶ作業を見直せば、4つの業態のどれでも、複数の課題を同時に動かせる可能性があります。

なぜ「牽引型」が現実解なのか

人と重機と、ロボットの役割分担

すべてを自動化する必要はありません。超重量物は引き続き重機に任せ、人を苦しめてきた500kg未満の手押し台車による幹線の移動だけをロボットに置き換える。この役割分担が、無理のない第一歩になります。
とりわけ化学・素材の現場では、危険な荷役は重機のまま残し、中軽量資材の往復だけを自動化することで、安全性の向上につながります。

台車ごと入れ替えない、という選択

搬送ロボットには、台車の下に潜り込んで持ち上げる潜り込み型もあります。ただし、この方式は専用の台車が必要になることが多く、工場にあるカゴ車や6輪台車を、廃棄して買い替えなければならない場合もあります。
牽引型AMRは、今あるカゴ車を引っ張って運ぶ方式です。資産を活かせる分、初期投資を抑えやすくなります。

観点台車ごと入れ替える方式今ある台車を引っ張る方式
初期投資専用台車の新規購入で大きくなりがち既存のカゴ車・台車を活かし小さく抑えられる
既存台車全面廃棄・入れ替えが前提そのまま使える(形状により事前検証が必要)
導入のハードル高い1ラインから始められ現実的

※図解:台車ごと入れ替える方式と、今ある台車を引っ張る方式の比較

現場にIT負担を持ち込まない

自動化がうまくいかない理由の多くは、現場の人が使いこなせないことにあります。操作は、タブレットで目的地を選ぶだけ。難しいプログラミングの知識は要りません。
ルートの変更や新しいレイアウトへの対応は、専門のエンジニアがソフトウェア上で行います。シニアや女性の従業員も、戸惑わずに使えます。

運ぶ人から、価値を生む人へ

搬送が自動化されると、専門職は持ち場に残り、検査や調整などコア業務に集中できます。インテリア・家具の現場でいえば、ラインを離れて歩く時間がなくなり、正味の稼働率の向上が見込まれます。
重い手押しからも解放されるため、女性やパート、派遣の方の定着率の改善も期待できます。「誰もが安心して長く働ける工場」は、地域の採用活動で強いアピールポイントにもなります。

導入前後で、現場はこう変わる

導入前は、コンベアがない現場でラインの担当者が搬送も兼ねていました。肉体の疲れと検査の遅れで生産性が下がり、体力が必要なため担当できる人も限られていました。
導入後は、工程間の部品や空箱の搬送をロボットが担います。きつい手押しがなくなり、シニアや女性を含む全員が加工や検査のコア業務に専念できます。人を増やさずに機械の稼働率を上げることで、コスト高を吸収できる強い現場に近づくことが期待されます。 ※導入効果の一例です。効果は現場の条件により異なります。

失敗しない導入の進め方

走らせる前に、データ上で検証する

導入の前に、今使っている台車のサイズと、工場内のルートをデータ上で確認します。曲がり切れない角はないか、人と交差する狭い場所はないか。無理なルートは走らせない、という誠実な設計が、現場に新たな事故の不安を与えないための基本です。
なお、既存の台車がすべて使えるとは限りません。形状や仕様によっては、事前の確認と調整が必要になります。

1ラインからのスモールスタート

最初から工場全体を変える必要はありません。まず1つのラインで、搬送の負担が重い区間を選んで試します。現場の声を聞きながら効果を確かめ、そのうえで範囲を広げていく進め方が、投資を抑えつつ、効果を確かめやすい方法です。
成果が見えれば、現場の納得感も自然に高まります。
「まずは1台、1ラインで」と始めた現場ほど、導入後に「ここにも使いたい」という声が自然に上がってくるものです。小さく始めることは、遠回りに見えて、実は有力な近道になります。

実績が示す、混在現場での安全性

牽引型AMR「TUGBOT2」は、ニチレイロジグループのロジスティクス・ネットワーク様の共配倉庫で、5℃帯の冷蔵環境のもと、作業者やフォークリフトとの混在現場で稼働しています。国内大手メーカーの工場でも、部品搬送用に合計18台が導入されました。人と同じ空間で動くため、導入にあたっては非常に厳格な安全基準を満たしています。

TUGBOT2は最大500kgまで牽引でき、カゴ車、6輪台車、ドーリーに対応します。連続稼働は6時間、ワイヤレスで自動充電を行い、欧州の安全基準であるCEマークも取得済みです。タブレットから呼び出せば、搬送物がなくなるまで自動で繰り返し運びます。

自社の「運ぶ」、どこまで見えていますか

次の項目に当てはまるものがないか、確認してみてください。複数あてはまる場合、搬送の見直しから着手する余地が大きいといえます。

□ 専門職や熟練者が、1日に何度も台車で運んでいる
□ 100〜300kg前後の台車を、人の力だけで押している工程がある
□ 搬送のために、機械や検査の持ち場が空く時間がある
□ 台車を押す仕事が、採用や定着の妨げになっていると感じる
□ 今ある台車を使いながら、小さく自動化を始めたい

当てはまる項目が多いほど、まだ取り切れていない生産性と定着の余地が、現場の「運ぶ」に残っている可能性があります。

結びに代えて

食品、インテリア、化学、自動車部品。業態が違っても、人が台車を押す光景は同じように現場に残っています。価格に転嫁できない時代に、利益を生み出す源は、今いる人の時間と力をどこに使うかです。
運ぶ仕事をロボットに任せ、人は人にしかできない仕事に向かう。その第一歩は、1ラインの小さな試行から始められます。自社の現場のどこから見直すか、考えてみてはいかがでしょうか。

シーオス株式会社 について

シーオスは、ロジスティクス分野に25年以上特化してきたソリューションカンパニーです。
「ロジスティクス」を単なる物の移動ではなく、企業価値に直結する重要領域と捉え事業を展開してまいりました。創業以来、ロジスティクス領域に特化した専門チームを擁し、現場理解と戦略立案の双方に強みを持つパートナーとして、製造・小売・ECなど数多くの企業様の課題解決に伴走しております。

戦略コンサルティングからシステム開発、WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)、RFP作成支援や第三者レビューに至るまで、システム刷新プロジェクトの上流工程を支えるフルラインアップのサービスを提供しています。さらに、自動搬送ロボットのソフトウェア開発・提供や、建設(コンストラクションマネジメント)まで、ロジスティクス領域を幅広く支援しています。

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この記事を書いた人

ロボティクス事業部 事業部長

キヤノン株式会社でインターネット黎明期のISP事業立ち上げに参画し、グループの通信インフラ構築を牽引。
株式会社ユビテック取締役として事業再編と新規サービス創出を主導し、JASDAQ上場に貢献。
さらに株式会社ブロードバンドタワーでIoT新規事業を推進。
事業創造を連続的に成功裏に導き、現在に至る。

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