■ この資料でわかること
- 物流システム刷新が「難しい」と言われる本当の理由
- WMS導入プロジェクトで直面する3つの難所
- 多拠点・短期間でも物流DXを成功させる考え方
- 現場と経営層が同じ方向を向くためのプロジェクト設計
- 物流システム刷新を成功へ導く6つの実践アプローチ
■ このような方におすすめ
- WMS・物流システム刷新を検討している方
- レガシーシステムからの脱却を目指している方
- RFP・要件定義をこれから進める方
- 物流DXを推進する責任者・プロジェクトリーダー
- 多拠点展開や業務標準化を進めたい方
はじめに:WMSは導入すれば成功する時代ではない
物流業界では、人手不足や物流2024年問題への対応に加え、レガシーシステムからの脱却や物流DXの推進を目的として、物流システム刷新を検討する企業が増えています。
一方で、プロジェクトの成功率は決して高いとは言えません。
「予定どおりに稼働しなかった」「想定以上にカスタマイズが増えた」「導入後も従来の業務から脱却できず、期待した効果が得られなかった」――こうした課題は、多くの物流システム刷新プロジェクトで共通して見られます。
その原因は、システムの性能や機能ではありません。
本当に重要なのは、要件定義の進め方や現場との合意形成、業務の標準化など、プロジェクト全体をどのように設計するかという「進め方」にあります。
本資料では、全国13拠点を対象に実施された物流システム刷新プロジェクトを題材に、現場で直面した課題と、その解決に向けた具体的な取り組みを紹介します。
物流システム刷新をこれから検討する企業はもちろん、RFP作成や要件定義を控えている方、物流DXを推進する責任者やプロジェクトリーダーにとって、失敗を避け、プロジェクトを成功へ導くためのヒントとしてご活用いただければ幸いです。
第1章:このプロジェクトは「WMS導入」ではなかった
物流システム刷新というと、「新しいWMS(倉庫管理システム)を導入するプロジェクト」と考えられがちです。
しかし、実際のプロジェクトでは、システムそのものよりも「業務をどう変えるか」が成功を左右します。
今回取り上げるのは、全国13拠点を対象に、約9か月という限られた期間で実施された物流システム刷新プロジェクトです。薬機法改正への対応やトレーサビリティの確保など、多くの制約がある中で、WMSの刷新だけでなく、物流業務全体の見直しに取り組みました。
プロジェクトを進める中で明らかになったのは、システム刷新を難しくしている原因は、システムそのものではないということです。
各拠点では長年の運用を通じて独自のルールが定着し、紙やExcelによる管理、担当者の経験に依存した作業、拠点ごとの例外対応など、現場ごとに異なる業務が数多く存在していました。
こうした運用は、それぞれの現場では合理的な方法として機能しています。しかし、そのまま新しいシステムへ置き換えようとすると、多くの個別対応やカスタマイズが必要となり、結果として導入期間やコストが膨らみ、将来の保守性や拡張性も損なわれてしまいます。
つまり、物流システム刷新とは「現状業務をシステムで再現すること」ではありません。
重要なのは、「将来も継続して運用できる標準業務」を設計し、その業務に合わせてシステムを構築することです。
本プロジェクトでも、目指したのはWMSの導入ではなく、13拠点で共通して運用できる物流オペレーションの実現でした。
この考え方をプロジェクト全体で共有できたことが、短期間かつ多拠点という難易度の高い物流システム刷新を成功へ導いた大きな要因の一つと言えるでしょう
第2章:プロジェクトを止める3つの難所
- 2-1 現場業務の標準化という壁
物流システム刷新プロジェクトは、システム開発よりも「業務」と「人」が原因で停滞するケースが少なくありません。
優れたWMSを選定し、十分な予算を確保していても、プロジェクトが思うように進まない企業には共通する課題があります。ここでは、多くの物流システム刷新で直面する3つの難所をご紹介します。
物流現場では、長年の運用を通じて独自のルールや作業方法が定着しています。
「この拠点だけの特別な運用」「担当者しか分からない作業」「紙やExcelを前提とした業務」などは、現場では合理的な工夫として機能しています。しかし、それらをすべて新しいWMSへ反映しようとすると、システムは複雑化し、カスタマイズが増え、将来的な保守や改善も難しくなります。
物流システム刷新では、現状業務をそのまま再現するのではなく、「どの業務を標準化し、どの業務を残すべきか」を見極めることが重要です。
- 2-2 要件定義・RFPで起こる落とし穴
物流システム刷新の成否は、要件定義の段階で大きく決まります。
現場から寄せられる要望をすべて取り入れようとすると、個別開発が増え、導入期間やコストは想定以上に膨らみます。
大切なのは、「現状を再現すること」ではなく、「将来の物流業務に必要な仕組みは何か」という視点で要件を整理することです。
RFPや要件定義は、ベンダーへ要望を伝えるための資料ではなく、自社が目指す物流の姿を明確にするためのプロセスであるという認識が欠かせません。
- 2-3 システム導入より難しい“現場への定着”
システムが予定どおり稼働したとしても、それだけではプロジェクトは成功とは言えません。
新しいWMSを導入しても、現場が従来どおり紙やExcelを使い続けたり、担当者ごとに異なる運用を続けたりすれば、物流改善の効果は限定的になってしまいます。
特に多拠点展開では、一つの拠点で成功した運用を全拠点へ展開できる仕組みづくりが重要です。そのためには、教育や運用ルールの整備だけでなく、現場が新しい業務を受け入れ、自ら改善を続けられる環境を構築する必要があります。
物流システム刷新は、システムを稼働させることがゴールではありません。現場に定着し、継続的な物流改善につながって初めて、本当の成功と言えるのです。
では、こうした難所をどのように乗り越えればよいのでしょうか。次章では、実際のプロジェクトで成果につながった6つの実践ポイントをご紹介します。
第3章:成功企業が実践した6つの進め方
物流システム刷新を成功させる企業には、共通するプロジェクトの進め方があります。
今回ご紹介する事例でも、最新のシステムや特別な手法に頼ったわけではありません。重要だったのは、プロジェクト全体を俯瞰し、現場・システム・経営の視点をバランスよく取り入れながら進めたことです。
ここでは、プロジェクト成功につながった6つの実践ポイントをご紹介します。
1.「現状維持」ではなく「標準化」を前提に考える
物流システム刷新では、「今の業務をそのまま再現したい」という要望が数多く挙がります。しかし、それらをすべて受け入れてしまうと、システムは複雑化し、将来的な保守や機能追加が難しくなります。
重要なのは、現状業務を再現することではなく、将来を見据えた標準業務を設計することです。今回のプロジェクトでも、拠点ごとの違いを整理し、全社共通で運用できる業務プロセスを構築することを最優先としました。
2.要件定義では「やりたいこと」より「やるべきこと」を整理する
要件定義では、多くの改善要望が現場から寄せられます。
しかし、すべてをシステムで実現しようとすると、開発期間やコストは膨らみ、プロジェクトのリスクも高まります。
そのため、「便利だから追加する」のではなく、「物流改善に本当に必要か」という視点で優先順位を整理することが重要です。RFPや要件定義は、自社の将来像を整理するためのプロセスでもあります。
3.現場を”利用者”ではなく”プロジェクトメンバー”にする
物流システム刷新は、情報システム部門だけでは成功しません。
実際にシステムを利用する現場担当者がプロジェクトへ参画し、課題や改善案を共有することで、現実的で運用しやすい仕組みを構築できます。また、現場がプロジェクトづくりに関わることで、新しい業務への理解が深まり、導入後の定着もスムーズになります。
4.短いサイクルで確認と改善を繰り返す
プロジェクトでは、一度に完成を目指すのではなく、設計・確認・改善を繰り返しながら進めることが重要です。小さな課題を早期に発見し、迅速に修正することで、大きな手戻りを防ぐことができます。
5.教育と運用ルールまで設計する
システムを導入するだけでは物流DXは実現できません。運用ルールや教育体制を整え、現場が新しい業務を理解し、継続的に運用できる環境づくりまで含めて設計することが重要です。
6.「キャラバン方式」で成功モデルを横展開する
多拠点への物流システム刷新では、一つの拠点だけ成功しても十分ではありません。重要なのは、先行拠点で得られた知見やノウハウを次の拠点へ確実に引き継ぎ、全社へ展開していくことです。
本プロジェクトでは、多拠点展開を効率的に進めるため、独自手法である「キャラバン方式」を採用しました。具体的には、拠点Aの導入時に、次に導入予定の拠点Bのキーパーソンもプロジェクトへ参加し、導入や標準化の進め方を現場で体感します。その経験を持ち帰り、自拠点で主体的に導入を推進することで、ノウハウが組織内で自然に継承される仕組みを構築しました。
このように、導入・定着・人材育成・次拠点の準備を並行して進めることで、13拠点への横展開を効率的に加速しました。 システムだけでなく、人材や運用ノウハウを組織内で継承していくことが、多拠点展開を成功させる重要なポイントです。
第4章:事例から導き出せる「物流システム刷新成功の5つの原則」
本事例は、特定の企業だから成功した特別なケースではありません。13拠点への物流システム刷新を通じて見えてきたのは、業種や企業規模を問わず、多くの物流システム刷新に共通する成功の考え方です。ここでは、本事例から導き出せる5つの原則をご紹介します。
① 現状業務をそのまま持ち込まない
現状を再現するのではなく、業務を整理・標準化したうえでシステムを設計することが重要です。
② 標準化なくして横展開はできない
多拠点展開では共通ルールが不可欠です。標準化が、品質とスピードを両立する土台になります。
③ 全要望を満たそうとしない
すべてを実現するのではなく、優先順位を付けて早期稼働を目指し、運用しながら改善を重ねることが成功への近道です。
④ 導入と定着は切り離さない
教育や伴走支援までをプロジェクトの範囲と考え、現場に定着して初めて導入は成功といえます。
⑤ データ活用まで見据えて初めて「攻め」になる
刷新はリスク回避で終わりではありません。可視化されたデータを活用し、継続的な改善につなげることで、物流は企業競争力を高める「攻め」の基盤となります。
結びに代えて
物流システム刷新は、新しいWMSを導入することが目的ではありません。
重要なのは、業務を標準化し、現場が無理なく運用できる仕組みを構築し、継続的な物流改善につなげることです。そのためには、システム選定だけでなく、要件定義やRFPの策定、現場との合意形成、教育・定着支援までを一体のプロジェクトとして捉える必要があります。
本資料でご紹介した事例は、特別な成功事例ではありません。現場の課題を一つひとつ整理し、関係者が共通の目的を持ちながら着実にプロジェクトを進めた結果です。
物流システム刷新は、企業ごとに抱える課題や目指す姿が異なるため、最適な進め方も一様ではありません。しかし、「業務を起点に考える」「現場を巻き込む」「将来を見据えて標準化する」という考え方は、どの企業にも共通する成功のポイントと言えるでしょう。
シーオスでは、物流現場で培ってきた豊富な知見をもとに、物流システム刷新の構想策定からRFP作成、要件定義、WMS導入、稼働後の定着支援まで、一貫したサポートを行っています。
「現行システムの刷新を検討している」「物流DXをどのように進めるべきか相談したい」とお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
物流システム刷新を、企業の競争力向上につながる物流DXへ。その実現に向けて、シーオスが伴走いたします。
シーオス株式会社 について
シーオスは、ロジスティクス分野に25年以上特化してきたソリューションカンパニーです。
「ロジスティクス」を単なる物の移動ではなく、企業価値に直結する重要領域と捉え事業を展開してまいりました。創業以来、ロジスティクス領域に特化した専門チームを擁し、現場理解と戦略立案の双方に強みを持つパートナーとして、製造・小売・ECなど数多くの企業様の課題解決に伴走しております。
戦略コンサルティングからシステム開発、WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)、最先端のAMR(自律型搬送ロボット)ソリューション、さらには現場業務の受託に至るまで、フルラインアップのサービスを提供しています。

