人とロボットが協働する現場における「安全最優先」の経営判断 〜国際規格「ISO 3691-4」への準拠と、それを技術的根拠とする「CEマーク」の重要性〜

目次

はじめに:自動化の前提条件となる「安全」への投資

労働人口の減少という構造的な課題に直面し、物流・製造現場における自動化は企業の存続に関わる重要テーマとなっています。固定設備から、より柔軟な自律移動ロボット(AMR)への移行が進む中、経営層や現場責任者が直面するのは「コストと安全のバランス」という難しい問いです。

しかし、人とロボットが同じ空間を共有する「協働環境」において、この優先順位を見誤ることは許されません。ひとたび重大事故が発生すれば、ラインの停止、補償、社会的信用の失墜など、導入コストの差額を遥かに超える損失を招くからです。

本レポートでは、なぜ協働環境において「コストよりも安全性が優先されるべき」なのか、そしてその客観的な証明として、なぜAMRの包括的な国際規格「ISO 3691-4」と、それを技術的根拠として取得した「CEマーク」が有効なのかを解説します。

協働環境において「安全性」がコストに優先する理由

「隔離」から「共存」へのパラダイムシフト

従来の産業用ロボットは、安全柵で人を隔離することで安全を担保していました。この場合、リスクは物理的に遮断されています。しかし、AMRは柵のない空間で人と混在して稼働します。 この環境下では、ロボットのわずかな誤検知や判断ミスが、即座に人的被害に直結するリスクを孕んでいます。

経営リスクとしての安全性

導入時の初期コスト(イニシャルコスト)を抑えるために安全性能を妥協することは、将来的に極めて大きな「見えない負債」を抱えることになります。

・事業継続性のリスク: 事故による長期間の稼働停止は、サプライチェーン全体に影響を及ぼします。

・企業ブランドの毀損: 安全管理体制への疑念は、顧客や株主、そして働く従業員の信頼を損ないます。

したがって、協働ロボットの選定においては、「いかに安く導入するか」ではなく、「いかに確実に事故を防ぎ、持続可能な運用を構築するか」という視点が、最終的なROI(投資対効果)を最大化する唯一の道です。

安全の「技術的根拠」と「法的適合性」

安全性を客観的に評価するためには、国際的な技術規格と、地域の法的要件の関係性を正しく理解する必要があります。

AMRの国際的技術規格「ISO 3691-4」

AMR(無人搬送車・システム)の安全性において、現在世界的な指標(ゴールドスタンダード)となっているのが、国際標準化機構が定める技術規格「ISO 3691-4」です。 これは、以下のような「車両としての挙動や運用」までを含めた包括的な安全要件を定めています。

  • 空間の認識と速度制御: 障害物までの距離に応じた適切な減速・停止機能
  • 旋回時の安全: カーブや旋回時に人と接触しないためのスペース確保やクリアランス
  • 動作モードの管理: 自動運転時とメンテナンス時の安全な切り替え

この規格に準拠することは、AMRとして想定されるリスクに対し、国際レベルの技術規格に則って対策を講じていることを意味します。

技術的根拠に基づく「CEマーク」の取得

CEマークは、製品がEU(欧州連合)の厳しい法的要件(機械指令など)に適合していることを示す「法的な適合性マーク」です。 この適合性を証明する際、最も信頼性の高い手段となるのが、整合規格であるISO 3691-4への準拠です。

  • ISO 3691-4(国際規格): 安全性を担保するための「技術的な手段・基準」
  • CEマーク(欧州法令): 基準を満たした結果として表示できる「適合の証」

つまり、ISO 3691-4に準拠することで、CEマークを表示するための「適合性の推定(Presumption of Conformity)」が得られ、製品の安全性が技術的に担保されていることが客観的に証明されます。 日本国内においてCEマークは法的義務ではありませんが、このプロセスを経た製品を選択することは、世界で最も厳しい水準の安全性を確保した機械を導入することと同義です。

国際規格に準拠したTUGBOT2の安全設計

「TUGBOT2」は、コストよりも安全を最優先する設計思想のもと、ISO 3691-4の要求事項に適合する設計を行い、それを技術的根拠として厳格なCEマークを取得しています。

規格に基づいた多層的な回避・防護システム

ISO 3691-4が求める包括的な安全要件を満たすため、TUGBOT2は以下のような検知・制御システムを標準実装しています。

  • 物理的な安全ロック機能: 2D-LIDARにより障害物を検知し、特に接触リスクの高い至近距離(0cm〜10cm)では、即座にハードウェアロックが作動する物理的な安全機構を備えています。
  • 自己位置認識によるエリア管理: ステレオカメラ等による正確な自己位置推定により、あらかじめ設定された走行可能エリアからの逸脱をシステム的に防止します。
  • 視覚的な注意喚起: 走行音に加え、進行方向へ「Blue spot light」を照射することで、死角にいる作業者へロボットの接近を直感的に伝達し、ヒヤリハットを未然に防ぎます。

導入支援とリスクアセスメントの適正化

どれほど設計が優れた機械であっても、運用環境に合わせたリスク管理がなければ安全は完結しません。シーオスでは、メーカーとしての技術的知見に基づき、安全運用の構築までをサポートします。

「EC適合宣言書」による客観的エビデンス

TUGBOT2は、メーカーであるRoboSavvy社が「EC適合宣言書(Declaration of Conformity)」の発行を受けています。 これは、製品がISO 3691-4等の規格に準拠し、欧州指令に適合していることを公的に宣言する文書です。社内の安全審査や稟議において、製品の安全性が技術的かつ法的に裏付けられていることを示す強力なエビデンスとなります。

リスクアセスメント作成の支援

日本の労働安全衛生法で努力義務化されているリスクアセスメントに対し、メーカーの立場から「リスクアセスメントシート」の作成を支援いたします。

  • メーカー情報の提供: 停止距離や検知範囲など、正確な製品データを提供します
  • 残留リスクへの対策: 現場のレイアウトに応じ、「どこに一時停止を設けるべきか」「どのエリアを走行禁止にすべきか」など、運用でカバーすべき対策を具体的に提案します

「国際規格に準拠した製品」と「適切な運用」を組み合わせることで、現場の負担を最小限に抑えつつ、実効性の高い安全管理体制を構築できます。

おわりに

生産性の向上は企業の重要課題ですが、それは「働く人の安全」という土台があって初めて成立します。「安価だが技術的根拠が不明確なロボット」を導入し、事故のリスクを抱えながら運用することは、長期的には企業にとって最大のコストとなります。

シーオス株式会社は、AMRの国際的な安全指標であるISO 3691-4に準拠し、それを確固たる根拠としてCEマークを取得したTUGBOT2と、現場に寄り添った導入支援を通じ、お客様の「安全で持続可能な物流DX」の実現を確約いたします。

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この記事を書いた人

ロボティクス事業部
副事業部長

キヤノン株式会社でインターネット黎明期のISP事業立ち上げに参画し、グループの通信インフラ構築を牽引。
株式会社ユビテック取締役として事業再編と新規サービス創出を主導し、JASDAQ上場に貢献。
さらに株式会社ブロードバンドタワーでIoT新規事業を推進、創業した株式会社ECBOスクエアをM&Aへ導くなど、事業創造を連続的に成功裏に導き、現在に至る。

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