Chaos(カオス)を正常化せよ 中編 ~秩序再建 現場再設計の実像~ 混乱からの脱却 ”見える化”×”標準化”が導いたオペレーション改革

前回は「Chaosを正常化せよ 前編 ~変革前夜 崩れた秩序の中で~」と題して、滞留件数16,000件超という危機的状況に陥ったフルフィルメントセンターの実態と、その背景にある構造的要因についてお話しさせて頂きました。

急成長するビジネスモデル、膨大なSKUと高い商品入替率、販売代行モデル特有の複雑なオペレーション、そして需要変動の大きさ。
これらが複雑に絡み合い、現場は限界点に達していました。

単なる作業遅延ではなく、仕組みそのものの再設計が不可避な状況。
私たちは、改革に着手する前に、まずクライアントのロジスティクス特性とKSFの見極めから入りました。

今回は、その理解を踏まえ、実際にどのような思想とアプローチでオペレーションの再設計に着手したのか。
オペレーションコンサルティングフェーズの軌跡と挑戦を振り返っていきます。

「標準化」という言葉が使われて久しいですが、誤差率10万分の1という驚異的な品質向上を実現した本オペレーション改革の思想は、多くの現場にとって示唆に富むものとなるはずです。

目次

現場効率化の出発点は4S

当社が支援に入る前に少し針を戻すと、もともと、X社のフルフィルメントセンターの業務は、A社が受託していたが、B社へと切り替えがなされ、そのタイミングで引越しも同時に実施をした。

この引越しが上手くいかず、モノがどこにあるか分からない状態を生んでいた。ピックしたい商品は大体この辺りとしか分からず、段ボールも散乱して棚に収まっていない。

パレットの上に直接段ボールが置かれて、その段ボールの上にまた段ボールが重なって置かれている。
どこに何があるかわからない状態で、買い物かごを持って、約200人のパート社員が延々とモノを探している。
新たなモノが入荷してきても格納せずに放置している。結果、どんどん足元がなくなっていく。

そのような状態で、当社は、まずオペレーション改善のコンサルティングという役割で支援に入る。

Chaosが渦巻くセンターで、当社はまず何に着手したのか。

ご想像に難くない通り、整理整頓である。一足飛びに全てのエリアを整理整頓するのではなく、エリアを絞ってロケーション別の在庫管理へと移行していく。時間的猶予はないため、本格的なシステムではなく、アクセスベースの「格納クン」と名付けた、商品をどのロケーションに格納するかを指示するツールを開発・導入した。

本ツールを用いて、まず選定されたエリアごとに棚を配置して、移動式間仕切り(商品の荷姿に合わせてロケーションの間口幅を調節できる仕切り)を入れて、ロケーションを構築し、ロケーション番号を振り、各ロケーションに商品を格納し、どのロケーションにどの商品があるかを「格納クン」に記録し、棚卸しをして数量を記録する。

このようにしてエリア単位で整理をかけていくことで、在庫スペースは圧縮されていく。空いた場所に対して、新たにロケーション管理された格納スペースを作る。ひたすらこれを繰り返すことで、ロケーション管理、すなわち、何がどこにあるかが分かる形へと移行していく。

当社の役割はコンサルティングであったため、実行に際しては当時業務を受託していた業者の社員とパート社員数名に当たって頂いた。

もう1つ、整理整頓で取り組んだことがある。それが販売会社への在庫返却(以降、販社返却)である。基本的に新刊が出ると、掲載商品は75%程度入れ替わる。弊社が支援するまでは、販売期間が終了してから販売会社へ返却する、というオペレーションしか存在しなかった。

しかしながら、通販がロングテール型であるとはいえ、売れる商品と売れない商品は存在する。売れない商品は早期に見極め、在庫を適正水準まで圧縮する必要がある。さもなければ、雑誌の切り替えのたびに新たな商品が流入し、保管スペース不足が常態化してしまう。

そこで、商品の売れ行きをもとに、適正な在庫水準を算出したリストをX社のMD(マーチャンダイザー:「何を・いくらで・どれだけ・いつ売るか」を設計し、売上と利益を最大化する役割)へ共有し、返却要否、返却数量を決定してもらうプロセスを構築した。MDはその役割から、売れ行きが落ちているので需要促進施策を打つ、といった思惑もあったりするため、あくまでも返却要否、返却数量の決定権はMDに委ねる形とした。

この販社返却のプロセス化により、文字通り「ムダ」な在庫の圧縮にも成功した。

幅広い品揃えが生んだ歪み

格納クンの導入および販社返却のプロセス化により、モノが溢れかえっている状態から在庫を圧縮し、全エリアでミニマムロケーション管理が可能な状態まで改善を図った。しかしながら、格納クンを用いた入荷品の格納は、想像以上に難易度の高いものであった。

その背景には、入荷時点で商品への標準的なバーコード貼付が期待できず、かつ複数商品がPCS(バラ)単位の詰め合わせで入庫されるケースが多い状態で、点数検品と仕分けをしなければならないという厳しい条件があった。

消費者からすると幅広い品揃え、すなわち、こんな商品があったのかといったWAOを提供することは大きな価値がある。しかしその一方で、販社を大手企業に限らず中小企業へも広げた結果、バーコード未貼付や、複数商品のPCS(バラ)詰め合わせといった形態が増え、オペレーションを極めて複雑なものにしていた。

標準化の威力

当社はこの課題を如何にして解決したのか。

その答えに入る前に、「標準ケース」という概念について説明したい。

我々は整理整頓の一環として、細かなキーホルダーから室内テントのような大型商品まで、荷姿が大きく異なる数万点の商品一つひとつに対し、それぞれを効率よく格納できる“箱の基準”を定義した。これが「標準ケース」である。

併せて、各商品について「1つの標準ケースに何個入れるか(入数)」もあらかじめ定義した。
例えば、キーホルダーであれば「SS箱・50個入り」、室内テントであれば「LL箱・3個入り」といった具合である。

このように、商品ごとに“使う箱のサイズ”と“その箱に入れる個数”を標準化することで、バラバラだった荷姿を一定のルールに揃えていった。

ミニマムロケーション管理の前提として、1ロケーション1SKUは担保されているが、1つのロケーションに対して複数の標準ケースが格納される(1:Nの関係)構造となる。例えば、ロケーションA-01-01には、キーホルダーXYZのSS箱が4箱格納される、といったイメージである。

当社は、この標準ケースという概念をベースに、入荷した商品を一度標準ケースに詰め替え、その単位で管理する方式へと転換した。具体的には、ケース単位で『かんばん(SKUかんばん)』を貼付し、「作業単位」を従来のPCS(バラ)から“ケース単位”へと切り替えたのである。この「作業単位」の切り替えとは、1PCS(バラ)毎に行っていた作業を1ケース毎に行う、ということを意味し、飛躍的な生産性向上に繋がる。

SKUかんばんは、その名の通りSKUごとに発行されるラベルであり、「どの商品が」「どのケースに」「いくつ入っているか」を一目で把握できる役割を持つ。

さらに、このかんばんと連動したシステムにより、検品リストを自動で出力する仕組みを構築した。検品項目はSKUごとにあらかじめ登録されているため、作業者はリストに従って確認するだけでよく、従来のように雑誌を参照しながら判断する必要がなくなった。

その結果、作業の迷いがなくなり、検品作業の生産性は大きく向上した。

また、標準ケースと入数の情報をもとに、システムがリアルタイムで格納場所を指示する仕組みを構築した。

具体例で説明する。

・キーホルダーXYZの標準ケースは「SS箱・入数50個」
・ロケーションA-01-01、A-01-02には、それぞれSS箱が最大4箱格納可能
・入荷前の時点で、キーホルダーXYZがA-01-01にSS箱3箱、A-01-02に2箱格納されている

この状態で、新たにキーホルダーXYZが74個入庫されたとする。

まずシステムは、入数(50個)に基づき、SS箱2箱分のかんばんを自動で出力する。作業者はこれに従い、1箱には50個、もう1箱には残りの24個を投入する。

そのうえで、システムは各ロケーションの空き状況を踏まえ、
・50個入りのSS箱 → A-01-01へ
・24個入りのSS箱 → A-01-02へ
といった形で、具体的な格納先を指示する。

これにより、「どこに入れるか」「どの棚のどの段に置くか」といった判断を作業者が行う必要はなくなり、同一商品の未満ケースへの積み増しや、空きスペースの有効活用といった作業も、すべて棚単位で具体的に指示されるようになった。

その結果、作業者が迷うことはなくなり、従来必要であった個装へのバーコード貼付や、返却時のシール剥がしといった作業も不要となった。さらに、PCS単位のバーコード検品を行わなくても、誤差率は約10万分の1という高い精度を実現した。これは改革前と比べて200倍以上の精度向上にあたる。

一見すると不利に思える入荷条件を、発想の転換によって強みに変え、品質と生産性を同時に高めた好例といえるだろう。

このようにして、入荷から商品の格納・保管に至るまでの一連の流れを“清流化”することができた。

ただし、保管工程までを清流化しただけでは、在庫の整合性は完全には担保されない。出荷時に、正しいロケーションから商品が取り出され、その数量が正確に記録されて初めて、在庫は一致するのである。

そのためオペレーションコンサルティングのフェーズでは、出荷工程についても試行錯誤を重ねながら、システム「格納クン」に機能を追加し、出荷側の清流化にも取り組んでいった。

しかし後半になるにつれ、コンサルティングというよりも、当社が現場に入り込み、具体的な作業指示を行いながら改善を進める場面が増えていった。

その結果、X社にとっては、当社へのコンサルティング費用と、現場業務を委託している会社へのオペレーション費用が並存する形となり、当社が現場に入ることで実質的に二重コストの状態となっていた。

こうした状況を受け、最終的には当社が業務そのものを受託する、いわゆるアウトソーシングのフェーズへと移行していくことになる。

次回は、このアウトソーシングフェーズにおける取り組みと、その過程で直面した課題について紹介したい。実はこの段階で、私たちは大きな失敗も経験している。その経験も含めて、現場改善のリアルとしてお伝えできればと思う。

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この記事を書いた人

上席執行役員
経営企画・人材組織開発部 部長
国際コーチング連盟 プロフェッショナル認定コーチ
外資系コンサルティングファームでキャリアをスタートし、ネット系ベンチャー、コーチングファームを経て現在に至る。

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